音楽用語のテンポ・ルバート
大抵は、ルバートと略して言います。
ケント・ギルバートと間違えないためでしょうか。
テンポ・ルバートの説明でよく目にするのは、
「盗んだ時間は返しなさい」というものですが、
これおかしいと思いませんか?
ルバートはイタリア語、形容詞で「盗まれた」という意味。
テンポ・ルバートの意味は「盗まれたテンポ(時間)」ということになります。
Rubareというのが「盗む」という動詞。動詞が盗むのならその主語は盗む人、「泥棒」です。「盗んだ時間は返しなさい」とは、例えば、フレーズ内のどこかで早くしたのならその分は必ずどこかで遅くしなさいということです。そうしないと辻褄が合わなくなってしまうからです。
僕はこの説明、違和感を覚えます。
泥棒ですよ?
盗んだものを返す泥棒がどこにいますか。
返すという意思があるのなら、「盗む」ではなくて「借りる」でしょう。
「借りたら返す」あたりまえです。
でもルバートの語源は「盗む」です。
盗んだものは返しませんよ。
プロフェッショナルな泥棒なら、盗む時はバレないように上手くやるのです。
テンポ・ルバートが、アッチェレランドやリタルダンドと明らかに違うのは、聴いている人にそれとわからないようにしなきゃいけない点でしょうね。盗むのですから。
あからさまで気まぐれなルバートは嫌味に聞こえることがあります。
テンポ操作があったことなどまるで気付かないような自然な流れが理想的です。
ルバートする時は綿密な計画が必要というわけです。無計画で捕まるような泥棒は格好よくない。
どんな時でも理性と平衡感覚は失いたくないものです。