プーランクの連弾ソナタを弾いていると、二楽章で「證誠寺の狸囃子」が聞こえてくる。「しょ、しょ、しょじょじ〜♪」というあれ。そこらじゅう狸だらけになる。そもそもこのソナタの冒頭からして壊れた八木節みたいで笑けてくる。
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昔NHKのラジオで渡辺徹がパーソナリティのクラシック番組があった。その中のコーナーで、似ている曲を探そう!的なものがあった。
クラシックと他のジャンルの音楽で、この2つメロディー似てないか!?というリスナーからの投稿を検証しようというもの。
ラヴェルのピアノ協奏曲と「ゴジラのテーマ」
ブラームスの4つの厳粛な歌と「コガネムシ」
ショパンの幻想曲と「雪の降る街」
などは、いまでも似てるネタの定番だ。
意図的に寄せて作られたものから、偶然似ちゃったものまで様々ある。
後者の方が圧倒的に面白い。中でも意表を突かれたのは、ブルックナーの交響曲第9番の3楽章と「物干し売りの声」。
長大な交響曲の極めて深刻で極めて美しい楽章の最中に「たけや〜竿竹っ!」と金管で声高らかに歌われる。
もう1つ、リストのメフィストポルカと「カエルの歌」。カエルの歌はバッハのシンフォニア13番が有名だが、リストのこんなマイナー曲をよくぞ!という点と、曲のキャラクターがまさにカエル的であり、その類似性はもはや芸術的ですらあるという2点で忘れがたい。
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聞いて比べて面白がるのはいいけれど、演奏するとなると大変で、少しでも同じ音並びや和声進行が出てくると頭がそっちに行ってしまう。
ピアノ組ならばシューマンの「楽しき農夫」を弾いているつもりが、気づくと「崖の上のポニョ」になっていた…てな経験があるだろう。
シューベルトの最後のソナタはどうしても「鉄腕アトム」に行ってしまう。
ラフマニノフの前奏曲ト短調op.23-5は、「きよしのズンドコ節」でしかない。
ズン、ズンズン…
皆様にこういう良からぬイメージを植え付け、演奏できなくしてしまうのが、ピアノを教える人間のひそやかな楽しみである。(?)