5つの音で音楽を 〜「ピアノ連弾」教材あれこれ

ピアノ連弾というジャンルも日々進化を遂げています。近年ではアクロバティックな技で魅せるイケイケデュオの活躍で連弾の可能性が大いに広がりました。それはそれは楽しい世界です。

 

とはいえ、ピアノ連弾は本来、室内楽であるわけですから、両者が一糸乱れずスーパー難度の離れ業をやってのける凄さというよりは、ふたりの人間が織りなす駆け引きの面白さ、対話的要素がその根底にあるわけです。

 

また、ピアノ連弾が家庭的なアンサンブルとして以上に、教育目的により多くの作品が作られてきたことは無視できない事実であります。

 

それこそ、ようやく音符が読めるようになってきた子供たちに音楽の動きやノリ、楽曲による表情の違いやその表現方法を体感し会得してもらうには、それらのピアノ連弾作品こそ最適な教材だといってよいでしょう。

 

 

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ドレミファソ、プリモが5つの音だけで演奏するよう書かれた連弾作品が世の中には沢山あります。なんと素晴らしいことでしょう。

 

手のポジション移動や指くぐりの必要ない5つの音だけですから、ピアノを始めて間もない子供たちであっても弾くことができます。そのぶんセコンドはいっちょ前に難しいことをやらされて面食らうわけですが、このセコンドパートの存在こそが、ピアノを始めたばかりの子供たちを音楽の世界に引きずり込む重要な役割を担っているのですから、我々は本気で挑まなくてはなりません。

 

実際そこまでの曲はなかなかありませんけれどもね。でも、中にはあるのです。

 

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例えば、アンドレ・カプレ のフランス小行進曲。これはカッコいい!

 

プリモはドレミファソの5音のみで主に付点音符の練習曲とも言えましょう。

 

 

一方でセコンドは鮮やかな転調を繰り返しながら鍵盤を右に左に駆け巡ります。

 

途中フランス国歌のラ・マルセイエーズが大胆に引用され、こんなに盛り上がる初心者向けの曲があってよいのだろうか、といらん心配をしたくなる程。

 

僕が特に関心するのは、これだけセコンドが大忙しで大変なことをするのに、あくまでも主役はプリモであり続けること、そう聴こえること、なのです。

 

たとえ、普段はえっちらおっちらで、あまり自分の演奏に自信がもてない子であったとしても、発表会でこれを弾き終えた時には大喝采間違いなしです。あれ?わたし上手いかも?とか思えてしまうのです。いやー上手いのは俺なんだけどなーと内心思いながらも、めでたしめでたしなのです。今流行りの自己肯定感とやらを植え付けるにはもってこいの曲ですこれは。

 

この曲は「小さなこと色々」という曲集に収められています。他の曲もどれも素敵なのですが、いかんせん作曲技法がやたら凝っていて和声も洒落こけているものですから若干のとっつきにくさがあります。

 

斬新な和音で感性を刺激するのもいいですが、僕としては、まずは、シンプルなハーモニーに感動して欲しいと思うわけです。

 

 

 

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そこで僕がよく取り上げるのはポーランドの作曲家、ルジツキの「ピアノのABC」からのいくつか。おそらく日本でこの教材を使っているのは僕だけだと思いますが…

神保町の古書店で偶然見つけたポーランド出版社のボロボロな表紙のこの本。いったい誰の手を経てはるばる神保町までやってきたのでしょうね。

 

ルジツキの書いた楽曲は和音がとてもきれいに響きます。そして使われているメロディーがとても素直で美しく、なにより音楽的です。素材はポーランド民謡や、ウクライナの旋律が多く、タトラ地方の独特な音階なども出てきます。

 

沸き立つリズム、圧倒的高揚感、むせび泣く憂いの旋律、これこそが音楽、民族の血のなせる技。

 

ルジツキ半端ないって!

 

 

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ポーランド勝って、日本は決勝進出⚽️

うん、個人的にはいちばんいい結果だな。