「基礎練習」に花束を

 

音階やアルペジオ、これらは基礎練習というよりメンテナンス。

残念ながら、これをしなくてよいという謂れはないように思います。

 

 

それとは別に、

 

「曲の中にはものすごく難しい所があるでしょ?そこで指の練習をするの」

 

とは、フジコ・ヘミングさんですが、確かに、おっしゃる通り、

 

「指の練習をするには人生は短すぎる」

 

のです。

 

 

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ピアノを始めた皆様に僕が真っ先にお伝えするのは、強弱と音の長さ。

 

小さく弾く、大きく弾く、レガートで弾く、スタッカートで弾く、の4つ。まずはこれだけ。これらを明確に弾きわけられるよう、全て同じフレーズでやってみます。

 

えらく単純なことではありますが、これこそが、音楽にさまざまな表情を与え得るはじめの一歩!だと思うのです。

 

どんな音楽表現も元を辿れば結局のところ、強弱と音の長さですから。後に、テヌート、ノン・レガート、モルト・レガート…などと細かく弾きわけていくにしてもです。

 

 

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音楽で感情を表現する場合、例えば、喜ばしいフレーズは喜ばしげに、悲しげなフレーズは悲しげに演奏できることが求められますが、では、そのフレーズが喜ばしく、または悲しげに、そう聴こえるためには、具体的に何をすればよいのか。そこが問題なのです。ピアノの前で喜んだり悲しげな顔をしているだけでは解決しませんからねえ。

 

ここで困らないように、いつでも使える演奏の引き出しを出来るだけたくさん作っておきたいのです。 こういうことは幼少期からキチンと仕込んでおきたい。「そこは太陽が笑っているような響きにしよう」という僕の要求に即座に音で反応する生徒達の顔は、真剣そのもの、少しも笑っちゃいません。

 

 

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我々大人の場合は、フジコさんの言う通り、時間がありませんから、そう悠長には構えてられませんのですが…難しいフレーズに出くわしたら、それをいく通りものテンポ、アーティキュレイション、表情で弾きわけてみることは、素晴らしいトレーニングになるでしょう。

 

色々なピアニストのもの真似だって大変に結構。名演奏の秘訣は何なのか、これほど創造的な練習が他にありますでしょうか。真似してみてわかることって沢山ありますから。

 

こうして身につけた「技」の数々は、今後出会う曲のいたるところで必ず役に立つのです。

 

基礎練習とはそういうものだと思います。